「いらっしゃい!上がって上がって」

「お邪魔しまーす」



玄関は懐かしい匂いがした。

靴を脱いで揃えると、昔の感覚が蘇る。




『お邪魔しまぁす!おばさん、碧いる!?』



幼稚園の頃から、私は自分の家よりもこの家にいりびたっていた。

靴を脱いで揃えて、
待ちきれないまま二階の碧の部屋に走りだした。



思わず、階段に目が行く。




「あの子の部屋は、今でも二階よ」



私の視線に気付いたんだろう。
沙知絵さんが笑って、そう言った。



「…どうせ帰って来ないから、上がっていいわよ。夏海ちゃん達なら許してくれるでしょ。それにもう整理されてて、あんまりモノもないから」