俺は窓から見える空を仰いだ。


あの時の、夏海の横顔を思い出す。




"大事なお兄ちゃんだよ"



そう涙を堪えるような笑顔で告げた彼女の、

小さな指先が震えていたことを覚えている。




悲しいことがあるのに言わない。

強がって、精一杯の嘘をつく時の、夏海の癖。



小さい頃から同じだった。

無意識に震えるんだ。



――…ココロの振動が、瞳から指先までに伝わる。

見抜けないわけがなかった。





本当は連れ去ってしまおうかと思った。

本気で思っていた。