部屋に備え付けのドレッサーを通り過ぎた時、その大きな鏡に目が行った。 足を止めて引き返すと、鏡のまん前に立ってみる。 少し疲れた顔をしてる。 でも生き生きとしているようにも見える。 自分は自分だし、 俺には俺の、戻るべき場所がある。 それを教えられなければきっと…ここには戻らなかった。 ふとテーブルの上の手袋に目を止めた時、「…やべ、忘れてた」と独り言がぽろっと出た。 純白の手袋をはめながら、目を閉じてそっと深呼吸をした。 …いろんな想いが込み上げてくる。