「忘れ物ない?」
そう聞かれて、私は紙袋の中を確認して頷いた。
「うん、大丈夫。着替えも入ってる」
「なっちゃん、その格好…」
「…うん。新幹線の駅ですかさず着替える」
駅に降りる時にはだいぶ恥ずかしいけど、それを言うなら今までも充分恥ずかしい。
私が肩をすくめると、祐樹はぷっと吹き出した。
「香奈ちゃん怒るぞ。抜け駆けしたー!って」
「抜ける前に言ったら絶対逃がしてくれないから、新幹線に乗ってから連絡するよ。事後報告」
「オッケー。それなら行こうか」
車のキーをくるくる回しながら歩く祐樹の後を、追った。
クローバーだけはちゃんと手に持ったまま。
絶対に潰したくないから。