碧は楽しそうに笑いながら、私の手にそれを乗っけた。


――胸が詰まって、何も言えなくなる。



「前に探した時は、二人で午後まるまる使ったのにな。すぐ見つかったんだよ」

「……っ」

「それに、あの時は俺が取っちゃったから」



私は目を閉じた。
泣きそうだ、と思った。


マスカラをしているのも忘れて、グッと目を拭う。



「そんな、昔のこと…」

「昔から何も変わってない」


碧は私の手をそっと包み込んだ。

温かくて、心地のいい、大好きな場所。



…いつの間にか小さくなった。
もうここしかない。

ここさえも、もうなくなってしまう。



「何も変わってない」