ホテルの裏には、綺麗な中庭があった。

小さな噴水まで付いていて、天国かと疑うぐらいに美しい空間だった。



「すごい!こんなところがあったんだね」


来た時には気付かなかった、とつい無邪気に喜んでしまった。

だけどそんな場合じゃないことを思い出して、ちょっと黙り込んだ。




「あ……ごめん」

「…」

「…碧?」




碧は噴水のところに少し腰掛けて、私を見つめている。

見つめられると少しくすぐったくなって「…何?」と聞いてみた。



「いや」


碧が目を閉じた。

風に体を預けるように、自然に。