私は振り向いた。
だけど振り向かなければ良かった。
純白のウエディングドレスに身を包んだ、あまりに綺麗な彼女が螺旋階段の上からこちらに向かって呼び掛けていた。
ただならぬ空気に気を利かせた人々が、受付をすませるとそそくさとホールの方へ入っていく。
ロビーにはもう、ほとんど人がいなかった。
「…なっちゃん」
祐樹と香奈だけが、残っている。
私は二人に背を向けたまま「…先行ってて」と言った。
胸が痛い。
心臓がうるさく騒いでいる。
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