淋しがるお母さんをよそに、私はきゅっと靴ひもを結んだ。

そして顔を上げて、微笑む。


「どうせもうバイトはないし…行ってくるよ。向こうで合流しよ」

「…もうっ…」

「先出てるよ、香奈」



いい年して膨れながら頷いたお母さんに手を振って、私はボストンバックを持ち上げると玄関を出た。


待って待って、と急いで靴を履いて香奈が私を追う。



家を出て少し歩いたところで、香奈は「お姉ちゃん」ともう一度呼び止めた。


それでも私はなんとなく振り向きたくなくて、聞こえないふりをしたまま歩き続けた。





それでも香奈は、私に投げ掛けた。



一番聴きたくない言葉を。