私はケータイを頬と肩の間にうまく挟みながら、バッグの用意をしていた。
…本当はこんなノリで聞くような話ではないはずだけど。
「…ナツってもう内定貰ってたよな?」
「うん」
「今度さ…どっか、遊びに行かね?」
松井くんにはこれまでも何度か、誘われたことがあった。
彼だけに限らず、大学生になってからは実際、何人かと付き合ったこともあった。
それでもどこか冷めた気持ちを抱いてしまう。
だから長続きしたことは一度もなかった。
松井くんはすごくいい人で、人間的にもすごく惹かれる部分がある。
だから私は、自分にちゃんと踏ん切りをつけるまでは、軽い気持ちで彼に関わるのはやめようと決めていた。
「…そうだね」
私は窓の外に目を遣った。