「は、はいはいっ」
ディスプレイに表示されたのは"松井くん"の文字。
同じバイト先で、ちょうど同い年の男の子だ。
「…もしもし?」
通話ボタンを押したと同時にそう言うと、「ナツ?」という聞き慣れた声が耳に入ってきた。
松井くんの声は、なんだか柔らかくて好きだ。
「うん」
「やっぱり今週は忙しいみたいでさ、店長が1日でも早く戻ってこれないかって」
「あ、戻れるよ!…そうだね、明後日には」
結婚式の日がお母さんの聞き間違いで、とは言わなかったけれど。
松井くんは「良かった!」と明るい声になった。
「皆待ってるから。…あと、俺も」
「うん、ありがとう」
「ナツ」
「…うん?」