聞こえないふり。
気にしないふり。
雑音をシャットアウトして、黙々とハードルを並べるあたし。
「ねぇねぇ。弟くん、こっち見てるよ」
亜美があたしの肩をとんとん叩く。
「あっそ」
「手、振らなくていいの?」
「は? なんで」
「姉弟なんだし、別に変じゃないでしょ」
いやいや、変でしょ。と心の中でつっこんでいると。
「何、照れてんの? 付き合いたてのカップルみた~い」
無邪気な口調で、そんなことを言われてしまった。
「……そんなわけないじゃん!」
考えるより先に、あたしは怒鳴っていた。
ハッと気づいて口をつぐむあたしの前には、困惑した表情の亜美。
「……ごめん」
しゅんとしてあやまったのは、亜美の方だった。
最低だ、あたし。
今朝のことでイライラした挙句、亜美に八つ当たり。