ガケ……。


そうだ、少しずつ記憶がよみがえってきた。

あのとき、ガケの下に那智の携帯が落ちていたんだっけ。


そもそも、なぜ那智が星名島にいたんだろう。



「あ、そっか。藍、何も知らねぇんだもんな」



悩んでいると、斗馬くんがこれまでのことを説明してくれた。




――『ありがとう』


その言葉を残し、あたしの携帯の充電が切れたのが、昨日の昼。


嫌な予感がした斗馬くんは、うちの押し入れや引き出しから知り合いの連絡先を調べ、いろんな所に電話をかけまくったらしい。


その中で偶然、那智の居場所を知っている人を見つけた。

斗馬くんはすぐに那智に会いに行った。



『藍がいなくなった』



その言葉を聞いたとたん、那智は顔色を変えて飛び出したそうだ。