斗馬くん……。
電話から戻ってきた斗馬くんが、那智の向こう側にいた。
その目はあたしを見ていない。
何も言わず、まっすぐ那智を映している。
立ち止まりかけていた那智が、再び歩き出した。
静寂の夜の公園に、ザッ、ザッ、と砂をこする足音。
そして――すれ違う瞬間
斗馬くんの視線が、真横の那智を見据えた。
「あんまり姉ちゃん心配させんなよ? 弟くん」
「……」
かすかに出ていた月灯りが
雲にさえぎられていく。
あたしの左腕の傷口が
燃えそうなほど、痛んだ。
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