つかまれた部分で痛みが弾け、
ぬるっと不快な感触が走る。


あたしの血だ。

さっき転んだときに肘の下を擦りむいていたらしい。


そして。



「――ッ」


声にならない悲鳴が、のどの奥でかすれた。



フラッシュバックのように脳裏をよぎったのは、いつかの美術室の光景。


そう、あのときも
那智はこうして

あたしの傷口に、舌を這わせたんだ。



「那……っ」



抵抗の声すらちゃんと出なかった。


熱い舌が動くたび、思考回路が焼け切れそうになった。



「那智……ダメ」



全身の血液が逆流する。



ダメ。

ダメ……!



また、よみがえってしまう。


せっかく封じこめて鍵をかけた

あの抑えきれない衝動が。