たとえば相手のことを想って幸せになったり、温かい気持ちが溢れたり。
そういうのを“好き”というのなら
那智は、違うと思う。
「ま、いいか」
ごめんごめん、と言いながら、また寝転がる下里さん。
部屋の電気を消すと、遠くで波の音が聞こえた。
ここに来てから10日が過ぎた。
少し遅めの昼休憩をもらい、休憩室に入ったあたしは
イスに座ったまま寝息をたてる斗馬くんを発見した。
うわっ……ふたりきりだ。
しかも寝てるし。
音を立てないようにそっと、彼から一番遠い席に座る。
そしてペットボトルのお茶をゴクリと飲んだとき。
「…んんー……アイちゃん…」
ふいうちの寝言に、あたしは思わず、むせてしまった。