ものすごくテレくさいのに。
なぜだろう、顔が笑ってしまう。
チラッと斗馬くんを見ると
やっぱり彼も口元がゆるんでいた。
斗馬くんの嬉しそうな顔に
あたしも同じだけ嬉しくなる。
しばらくふたりで、意味もなくクスクス笑い合っていると
「○○行きが到着します」
と駅のアナウンスが聞こえてきた。
あ……。あたしが乗る電車だ。
もう、来ちゃうのか。
ふいにそんな感情が生まれ、自分で自分にビックリした。
「電車、これだよな?」
「あ、うん……」
明日も学校に行けば、あたしたちは普通に顔を合わす。
だけど。
今じゃなきゃ言えない言葉が、気持ちが
あるような気がして。
「斗馬くん、あのねっ」
あたしはまっすぐに彼を見た。
「あたしも一緒に、夏休みのバイトさせてもらえるかな」
……前に進もう。
やっと季節が、廻り出すんだ。