……そっか。ちょっとだけ、わかってきた。
初めて田辺くんと話したとき、なんとなく“見下されてる”って感じた理由。
別に見下してるわけじゃないんだ。
彼の持つ、余裕に満ちあふれたようなオーラが
あたしみたいな卑屈な人間からすると、見下したように感じただけで。
そんなことを考えながら、腑に落ちた気分になっていると
「――“藍”」
唐突に、田辺くんの口からあたしの名前が飛び出した。
「え?」
「いい名前だよなぁ。
姫の、藍って名前」
人さし指で“藍”の字を宙に書きながら、しみじみつぶやく田辺くん。
「……あ、ありがとう」
「愛情じゃなくて藍色のアイってとこがいい」
俺、藍色好きだし。と田辺くんが笑う。