気づけば、高一の春が終わろうとしていた。
高校に入って変わった事といえば、通学に電車を使うようになった事と、セーラー服がブレザーになった事くらい。
学校は特に楽しくない。
だけど、苦痛でもない。
知り合いが少なければ少ないほど、心が安らぐ自分がいる。
今日から5月。
だるい体を起こすと、壁掛けのカレンダーが目に入った。
「あ……今日、バイトの初日だ」
「桃崎藍さん、15歳ね」
「よろしくお願いします」
学校から2駅離れた町の書店で、今日から放課後のアルバイト。
スタッフ用のエプロンを着けたあたしは事務室に入り、副店長の女性にあいさつした。