あたしはリビングに移動し、本棚の引き出しを勢いよく開けた。
……ない。
他の引き出しもすべて開け、テレビボードの下や電話台も確認し、
まるで空き巣のように部屋をグチャグチャにしていく。
……ない。
やっぱりない。
「藍? 何してん?」
物音で起きたのか、那智が眠そうな顔でリビングに入ってくる。
「……ないの」
「あ?」
「どこにも見つからないの」
「何がやねん。…あ、おい」
あたしは那智の横を走りぬけ、お父さんたちの部屋に入った。
8畳の和室は埃ひとつなく掃除されている。
お父さんたちのタンスの棚を勝手に開けるあたしに、那智が後ろから声をかけた。
「何探してんねん」