あたしは気だるさの残る体を起こし、そっと部屋を出た。
廊下にもリビングにも人影はなく、物音ひとつせず、
まるで夢の延長にいるようで、頭がうまく覚醒しなかった。
キッチンの扉を開けてみるが、やはり誰もいない。
完璧に片付けられた流し台や食器棚は、ドラマのセットのようで違和感を覚えた。
冷蔵庫から取り出したお茶をコップにくんでいると、テーブルの上に置手紙があるのに気づいた。
『出かけてきます。夜には帰ります』
お父さんの字だ。
きっとおばさんも一緒に出かけたんだろう。
わざわざこんなの書いていかなくてもいいのに。
そう思いながら再び冷蔵庫を開け、お茶を戻す。
そのとき、ふっと梅ジュースの匂いが冷蔵庫から漂い、
なぜか急に、嫌な予感に襲われた。