クスクスと笑い合う。


こんないつも通りのやり取りの中に、あたしは何か確かなものを見出そうとする。



「なぁ」


那智が言った。


「ん?」

「昨日、どこに行ってた?
大丈夫やったんか?」

「……」



答えたくなかった。

言ってはいけないと思った。



「……うん。大丈夫」

「ホンマに?」

「うん」




……ホントはね、那智。


あたし、すごく怖かったよ。



雨の中を濡れて歩いた。

初めて万引きをした。

真っ暗な海で、ひとりで眠って

変なやつらに追いかけられたよ。



だけど絶対に那智が来てくれるって


あたしを見つけてくれるのは那智だって


信じてたんだよ。