「じゃ、映画はまた今度にするかっ」

正彦が私を見て笑った。

慌てた紗耶香は

「ね、ねえ、今日みたい映画さ、公開終了間近なのよ。仕方ないから2人で見ようよ」

と、正彦の腕を引っ張っている。



私が黙っていると、紗耶香は(あんたも言いなさい)と言わんばかりのニラみをきかせてきた。


「そうだよ、せっかく駅まできたんだしさっ。さ、行っておいで」


我ながら上手に言えたと思った。