「あーやだやだ。男ってこんなときでも可愛い子には素直に反応するのねー」


可愛い。


その言葉に今度は心臓がどくん、強く打つ。



「……って今度は弥八子が赤くなっちゃった。弥八子、この男はやめておきなよ? 付き合ったところでどーせ陸上一筋なんだから」

「ばっ、何言ってんだお前!?」


過剰なアクションを取る日下さんの様子を見ても、冗談だと、泣いた自分の気持ちを浮上させてくれようとしてるのだとわかるのに。



ふしぎ。

私の心は、素直に、正直に、軽くなってゆく。



さっきまでは自分の全てを吐露するように泣いていたのに。

今は嬉しくて涙が出そう。