「もうこんなバカほっといていいや。弥八子、あたしも聞いてよー。うちね弟がいるんだけど」

青野君の方に向かって片手をひらひらさせてから、日下さんが肩を落とす。

それも初耳で、私は「うん」とだけ頷いた。



「……オタクなの」

「お前……それ今どうでもいいだろ」

「いやいやいや、これがもう姉のあたしがドン引きするぐらいなんだから!」


呆れて溜め息をついた青野君に日下さんは首を細かく勢いよく振る。


「何が好きなの?」

話の向かっていく方向はわからなかったけど、なんだか気になってしまって聞いてみる。

すると、よくぞ聞いてくれました、といった顔で彼女が私を見てきた。



「戦闘機」

たったひとこと発せられた言葉。

そこまでは青野君も知らなかったらしく、きょとんとした表情をしている。