「こんなこと言っちゃなんだけどよ……オレの姉貴もなんつーか荒れててさ」

「え?」


青野君にお姉さんがいたことは初耳だ。

気まずそうな、恥ずかしそうな顔をして、彼ははにかむ。



「あ、でも乾なんかにゃ断然およばねぇっつーか……あ、言葉が変だけど。ま、まあオレも小さい頃から結構姉貴には殴られたり蹴られたりしてんだよな」

「ちょっと皐次郎、あんたんとこは仲いいじゃん。何言ってんの」

私の手を握ったままの日下さんが窘(たしな)めると、必死に動いていた人差し指が鼻から離れ、左手も加わって胸の前で広げられて、左右に振られる。



「仲なんかよくねぇよ! って、違う、だから乾とは違うと思うっつってんだろ。オレなんかきっとものすげぇちっぽけなことだと思うよ。だけどさ……あー、なんだっけ、お前のせいで忘れたじゃねぇかよ」

「は? なんであたしのせいなのよ。どうせ大したことなかったんじゃないの?」

「なっ……お前なぁ、オレがせっかく乾を笑わせてやろうと」


「自分で言ってどうすんの」