冷静な自分と、押し潰されそうになる自分。

そのふたりが、ぐちゃぐちゃになりながら、交互に顔を出す。





「……兄と……ちょっと喧嘩しちゃって」


冷静な自分が、勝った。

やっぱり、言えないことだと判断した方がいい。



なのに。


「……本当か?」


後ろから聞こえた彼の声に、身体が素直に反応してしまった。


「弥八子……ね、我慢しなくていいよ?」

続けて日下さんが私の手をそっと取って握ってくれる。





我慢。

がまん、ってなんだろう。