青野君は頭をかきむしりながら苦い顔をし、ちょっとだけ振り返って見た霧崎君は、ただこちらを見ていた。


ふと、その手に携帯電話が握られていることに気がつく。

開かれた画面を霧崎君はこちらに向けてきた。


『脚、見て悪い』


私に対してのようだったので首を向け、目を凝らした先に見えたのはたったそれだけ。

メールの送信画面か、メモ帳か何かに、一文記されていた。



私が読んだことに気づいたのか、霧崎君はすぐに携帯電話を閉じてポケットにしまってしまった。

その表情は、全くと言っていいほど感情がわからなかったけれど。


私の心の中には、よくわからない感情が生まれてゆく。





でもそれは、続けられるふたりの言い争いに、一気にかき消された。