霧崎君の方から、かたん、という音が再び聞こえる。



「あ、嫌なら答えなくていいんだよ? 誰にだって言いたくないことぐらい――」

「日下、それでは条件が違う」

笑って両手を振りながらの言葉に、大庭君の声がかぶせられた。


「条件、ってあれはあんたの勝手な命令みたいなものじゃん」

「皆納得しただろう。乾だってそれを承知で了承したのだ」

「だからって、弥八子のことも考えてよ! やっぱりおかしいよ、何でこんなことしなきゃいけないの!?」

「ここから出たくはないのか、とさっき言っただろう。その方法を考える為にしているのだろうが」


ふたりの声のトーンが上がってゆく。


私には日下さんの優しさもわかるし。

大庭君の考えもわからなくはない。


だけど何が正しくて、何が正しくないのかなんて、わからない。