「脚」


左斜め後ろの席に座っていたのは霧崎君。

今まで何も言わなかった彼が、たったひとつの単語を口にする。



びくり、と肩が動く。

背中を冷たい何かが這う。





「足?」

聞き返したのは青野君だった。

でも意味が分からないようで、私のつま先辺りに視線を落とす。


 
違う、きっと霧崎君が言ったのはそこじゃない。

だけどどうして彼は知っているの?