「えっと……じゃあ何が辛いのか、聞いても大丈夫?」

私の隣の席に座って窺ってくる日下さん。

おずおずと、傷口を広げたくないように。



私も、じゅくじゅくとしたかさぶたが出来ることがない傷口を広げたくはない。


 


そう思ってしまったら、肩に力が入った。

「嘘は禁止」その言葉が頭の中でリフレインされる、壊れた機械みたいに。



どうするべきだろう、適当な嘘をついてはばれてしまうだろうか。

でも正直に言ったらどうなるのだろう。

言いたくないけど、言わなければみんなが困ってしまうのだろうか。



握り絞めた手のひらに、爪が食い込む。
それでも痛みは感じない。