「大庭、そういう風に言うのは、よした方がいい」

怒るわけでもなく、たしなめるわけでもない声。

そんな彼の声が上から聞こえてくる。


 
「何も乾を問いつめているわけじゃない。ただ最善を尽くそうとしているだけだ」

「今ここには俺ら5人しかいない。場を険悪にするのが最善とは思えない」


その言葉に、教室の空気が揺らいだ。

みんなわかってはいることだけれど、はっきり言われると戸惑いや遠慮が生じる。


大庭君の顔は見えなかったけれど、青野君がちょっとおろおろしてるから、この状況もいいとは言えないのだろう。




「……霧崎君、大丈夫だから」


なんとか口に出来たのは、それだけだった。

だけどめいいっぱい、口角を上げる。