「ひとつ聞くが」 大庭君の声が私たち5人しかいない教室によく響いた。 「乾、お前はこういうことを望んだことがあるか?」 そしてその言葉は私の胸に真っ直ぐ、深く、突き刺さる。 でもそれにはすぐに首を横に振った。 疑われるのが怖いわけじゃない。 自分のせいになるのが嫌なわけじゃない。 だって、私には望みなんてひとつしかなかったから。