同時に、霧崎君が小さく溜め息をこぼしたのが聞こえた。

思わず仰ぎ見れば、無表情ではなくどこか苦しそうに見える。


その表情に再び冷たい感覚が背中に走った。


やっぱり、彼は私が飛び降りたのを見てるのかもしれない。



私には飛び降りた記憶がある。

屋上の固いコンクリートがなくなった感覚も、落ちてゆく解放感も。

そして途中霧崎君と目があったことも――


私はその記憶を持ってここにいる。





なら彼も、私を、地面に落下してゆく私を見た記憶を持っているの?