「結局使えなかったんだから、いつ出そうが一緒だろ」
言葉はたくさん生まれても、口からひとつも出てこない私の後ろから声が聞こえた。
その声は誰に言うでもなく、ただ空間に放たれたよう。
心臓が一気に泊数を上げる。
「だが早くに出せば何か違った――」
「暇潰しに音楽聞けたりゲーム出来たりすんだろうし、乾に感謝だな」
笑うわけでも嫌味なわけでもない。
霧崎君はぶっきらぼうに、淡々と言葉を紡ぐだけ。
その様子に毒気を抜かれたのか、大庭君が呆れたように溜め息をついた。
私に向かってきていた訝(いぶか)る視線も、削がれたみたいでふいっと顔を背けられる。