「なんだ……これ……」


青野君も日下さんも、目の当たりにした事実に顔がさっと曇る。

大庭君は顔をしかめて眼鏡のブリッジを触っていて。

後ろを振り返れば霧崎君が冷静な表情で時計を見つめていた。


見ていた私に気がついたのか、霧崎君の視線がこちらに向かってきて目が合った。



しまった。

そう思いつつも、すぐに逸らせられなかった。

普段あまり顔を見た記憶がないせいか、狐目だと思っていたのが案外優しい瞳でちょっと驚く。


そしてその視線が私に携帯電話の存在を思い出させてくれた。

さっき彼の言葉に驚いて、ポケットから出すのをすっかり忘れていた。