少しずつ戻る、いつもの教室の雰囲気。

そっと時計に目をやれば針はまだ3分間を繰り返しているらしい。



繰り返されない時間は、きっと厳しい。


でもここにいた方がいいとはおもわない。





「かけるか、電話」

握っていた携帯電話を見つめたところで、霧崎君の静かな声が聞こえてきた。

ずっと大人だと思っていた霧崎君、人に流されないで自分があるんだと思っていた。



「大丈夫、戻っても絶対覚えてるから」

頷いてにっこり笑う日下さん。

ムードメーカーで明るくて、でもその明るさは乗り越えてきた過去があったからこそだと知った。



「頑張れよ……オレも頑張るしさ」

ちょっと照れくさそうに青野君は頭をがしがしとかいていた。

気さくでスポーツ万能、ライバルとの差に悩んでも陸上に夢は持っていた。



「また迷い出す前にかける方がいいだろう」

眼鏡のブリッジを押し上げて言う大庭君の声はやはり落ち着いていた。

勉強だけじゃない頭の良さがあった彼も、きっとスタートをきるんじゃないだろうか。