それはさりげない提案だったのかもしれないけれど。

なんだか少し“望み”のように思えてしまって。


そしてそれが私の“望み”でもあるような気がして。

「それがいい」


一番最初に、賛同した。



小学生の頃はまだしも、段々と苗字ではなく名前で呼んでくれるひとは少なくなってくる。

今このクラスでは、日下さんしか私の名前を呼んでくれるひとはいなかった。


けれどそれは私も同じで、なんだか名前で呼ぶことが憚(はばか)れていたのも事実。

だから、もし良ければ。



「おう、それいいな!」

「俺も……構わない」

「じゃー決定で! てかあたしは既に弥八子と皐次郎は呼んでるんだよねー。じゃあ弥八子は『みや』って呼んでいい?」

「おい、みやってなんか違くね? 男っぽくね? てかじゃオレはどうなんだよ?」

「えー、皐次郎は皐次郎でいいっしょ。じゃ弥八子は『みーや』にする」

「オレだけどうでもいいのかよ!?」

「うるさいな、苦情は戻ってから言え」