「……戻ったら、忘れてたりしないかな」
一度、携帯電話を閉じてから不安を口にする。
「それも、お前次第じゃないか」
だけどすぐに霧崎君がその不安をかき散らしてくれた。
「あー、じゃあ念のためにさ、約束しようよ!」
「は? 約束?」
散らした不安をさらに消してくれるかのような日下さんの声。
「そうそう、ここで約束して戻って実行されてたらみんな覚えてるってことじゃん?」
誰も否定的な表情を浮かべるひとはいなかった。
もちろん、私も。
ここでみんなからもらった言葉は、優しさは、怒りは。
ずっと忘れないで大事にしておきたい。
「なるほどな。じゃあ何にすんだよ?」
「んー、そうだなー」
いつものふたりのように進む会話に、今まで黙って成り行きを眺めていた大庭君が鼻の頭をかいた。
「皆、下の名前で呼び合うとかか」