「……かけろってことじゃない?」

それぞれに何かを考えていたような中、日下さんが首を傾げながら言った。

「電話をか? 誰に?」

すぐに疑問を重ねた青野君に、唇を尖らせながら日下さんは続けた。


「さっき“伝えたい”って弥八子言ったでしょ? だから“伝えたい”ことがある相手に」


その言葉に、みんなが納得したような表情を浮かべた。

確かに電話に出るよりもかける方がしっくりくる気がする。


「なるほど。では鳴ったのは合図なのかもな」

頷きながら大庭君の言葉に、皆が顔を向けた。


次の言葉を待って。



「現実に、戻る為の」



それが果たして本当にそうなのか、確証は何もない。

だけどみんなが何故かそう思っていたかのように、頷いた。



もう、大丈夫だと確認しあうかのように――



そっとポケットから携帯電話を取り出す。

開いて着信を確認すると、そこにはきちんと登録した名称が表示されていた。