「弥八子!」
「乾!」
みんなの声が重なる。
私はこれをきっかけにスタートしよう。
「……戻りたい。戻ってきちんと伝えたい」
言葉は口にして力になる。
意志を告げた身体は途端に軽くなり、みんなの手に導かれるように。
すっと床から抜け出ることが出来た。
瞬間、スカートのポケットから鳴り響く電子音。
両手をみんなと繋げたまま、視線だけ動かすとすぐにそれは鳴りやんだ。
「……ケータイ?」
日下さんの声に、大庭君が溜め息をつく。
青野君は片手でジャージのポケットから携帯電話を取り出して確認していた。
「いや、電波ねぇんだけど」そう呟きながら。
大庭君の冷ややかな視線が私から霧崎君に移り、移された本人は素知らぬ表情を浮かべる。
ふたりを見ていた日下さんも、微かに何かを納得したように頷きながら私を見てくる。
一拍、沈黙。