「乾っ!」
見えているのに入っていなかった目の前の景色が急に低くなった気がした。
霧崎君に繋がれた手が強く引っ張られている。
その痛みに目を覚ませ、辺りを確認すれば私の下半身が黒く染まり、足に何かうごめくものが絡まっていた。
「え――」
その絡まっている黒いもののせいで、私の身体は教室の床に引きずり込まれようとしている。
そしてそれを必死に止めようとしてくれているのが霧崎君だった。
「弥八子っ!」
「おいっ!?」
慌てて日下さんが霧崎君に加勢し、青野君と大庭君は左手を取ってくれた。
痛いほどに、握られた手のひらと手首。
「何考えてるんだ!」
大庭君の声が、怒りではない別の感情で激しさを増していた。
『言いたいことがあったら言えよ!』
頭の中では、兄の声が響く。