「引っ張って……見つかると思うか……?」

「そんなのわからない。でも少しぐらい信じてみたい」


それは霧崎君に言ったわけではなく、私自身に言った言葉。

口から放ってみて、その言葉の力に驚く。

思ってるだけじゃ、駄目なんだ。


声に出したとき、それはきっと踏み出すひと押しとなる。



そんな私の気持ちが彼にも伝わったのだろうか。

強く握った手のひらが、再び強く握り返され。

「そうか……そうかもな」という言葉が、小さく零れ出た。



途端襲ってきたのは、とてつもない疲労感。

身体の力が一気に抜けていく気がして、思わず床にへたりこんでしまった。

だけど、手は繋がれたまま。


霧崎君も、私の手を離さないでいてくれた。


だから、その疲労感がどこか温かく心地よい。

見上げた先には、少しだけ頬を赤く染めてはにかむ顔があった。