涙に濡れた頬が熱かった。

涙で腫れた瞼が重かった。

でも目の前に立つ彼は。


唇をぎゅっと結んで、私を見ていてくれた。


「福の面が見当たらないなら、ふたりで一緒に縄を引っ張ろう」


大きなかぶの物語のように、独りでは出来ないことも誰かと一緒ならば出来るのかもしれない。


うまく伝わっているかわからない不安が押し寄せてくる、でも私はそれを必死に押し戻す。

伝わらないならば何度でも声に出そうと思った。

似ているからこそ、ここで彼を離してはいけないと思った。



だって――私が行き着いた先は何も選べない場所だったから。



今私は、ようやく上を見ることが出来た気がする。