「俺は……」

「一緒に、行こう」


その言葉の続きはいらない。

唇は笑っていても、瞳は泣いている、そんな霧崎君の手のひらを強く握りしめる。


「会話が出来ないって言ったけれど、そんなことない。本当に出来なかったらきっと今私は泣いてないよ。だから」


空いている左手で零れた最後の涙を拭う。


「一緒に一歩、踏み出して……私ひとりじゃまだ不安だから、怖いから。でもふたりならなんとかなるかもしれない……手伝って欲しいって言ったら、わがままかな」


人は独りでは生きていけない。

どこかで誰かが言っていた。

そんな容易く言うなんて、とそのときは思っていた。


だけどその言葉の意味が、少しわかる気がする。

“独り”それは孤独とか家族や友人がいないことじゃなくて。



頼ったり、頼られたりする相手がいないこと。