誰にも言うことが出来なかったことを言えた今、少しだけ心臓がいつもより軽く跳ねている。

すっきりしたわけではない、胸の中のもやもやは残ったまま。

だけどこめかみがじんじんとするような、今までにない不思議な感覚が私を襲ってくる。


こんなこと話して良かったのだろうか。

そう思ってしまう自分がふと生まれたとき。

霧崎君がすうっと息を吸った。


「1秒の違いに、何があると思う?」

その唇から発せられた言葉は、小さく低温。

それでもしっかりと発音された言葉は真っ直ぐに私の身体へと突き刺さる。



「15歳から16歳になるのはほんの一瞬だ。たった1秒で大人になれると思うか?」



頭の中ではどこか冷静に考えていたこと。

誕生日が来たからって何かが劇的に変わるわけではない。


一粒の氷が、心の中でかたりと揺れた。