その手は確かに暖かくて、しっかりそこにあって。

外にいる三人が微笑みながら、教室の角へと移動してくれたと同時に。

私の手を握り返してきてくれた。


それが彼の不安なのか決意なのかはわからない。

ただぎゅっと伝わってくる熱が。

私に“生”を感じさせてくれる。


何を言えばいいのかなんて、本当はさっぱり思い浮かばない。

どうしたら彼を連れだせるのか、何も案が出てこない。


でも迷っていたら駄目だ。

考えて何も出来なかったら駄目だ。



日下さんが言っていた、わかってもらえないと諦めるのとわかってもらおうと何かを発信し続けるのは違うんだって。


ならばわかってあげられないと諦めるのと。

少しでもわかってあげようと何かをし続けるのも。


きっと違うから。


「私ね」

まずは私の話をしよう。

「ずっと、違うんだと思ってたの」