「もし5人に何か共通点、もしくは原因、理由、なんでもいい何かがあるのなら全員その中にいないと可笑しい。だが現に僕たちは外だ、そして霧崎だけが乾と一緒だ」
いやでも私が勝手に“自分と似ている”と思ってしまったからで、それは彼らには言ってないのだからそんな考え方になっても仕方がない。
そう思いながら私は右手を下げて聞いていた。
「お前にも、何かあるんじゃないのか?」
だけど大庭君ははっきりと霧崎君を見て聞いた。
私も一緒に彼の横顔を見てしまう。
いつも落ち着いていて、どこか儚く綺麗な横顔が。
ぐしゃりと歪み、地面を向いていた。
その意外な表情に息を飲む。
そしてそろそろと上がった右手に、私は呼吸を止めた。
右手は肯定の証、大庭君の言うことを認めた証拠。
確かに彼にだって何かがあるといっても間違いじゃないんだろうなとは思っていた。
大庭君だってやりたいことで悩んでた。
日下さんは恋人に振られたことを悲しんでいた。
青野君は大会で良い成績を残せなかったことを悔やんでいた。