「大丈夫なのか? 出てこれないのか?」

半透明の膜のすぐ向こう側で彼が眉を寄せながら口を動かしていた。

「大丈夫。出るのは……どうだろう」


ただ慌てて返事をするも、大庭君から返ってきた言葉は同じものだった。


「大庭、大丈夫だ。危険はなさそうだ」

かたん、と音がして霧崎君が私の横に立ちながら言う。


それでも大庭君をはじめ、日下さんも青野君も「返事して」と心配そうな顔で言い続けていた。



つまり、彼らに私たちの声は届かないということだろうか。

彼らの声はしっかりと聞こえているのに。



「乾、霧崎、こちらの声は聞こえているのか?」

そのことにどうやら大庭君も気づいたらしい。

どうにかして答えなきゃと、大きく頷いてみせると彼は「そうか」と両腕を組む。