生きていれば幸せも不幸もどちらもある、どっちか片方だけなんてないんだと。

それは容易(たやす)く変わるものなのだと。



わからない。


私が最後に幸せだと思ったのはいつだろう。

それから一体どれだけ辛いときを過ごしたのだろう。


もし転々と幸不幸が変わるなら、私はきっと屋上には向かわなかった。



だからしっかりと答えた。


そしてその答えに。

霧崎君は瞼を押し上げ、悲しい瞳の色を携えて頷いた。

「俺も、わからないんだ」

そう唇を動かしながら。



その瞬間私の心の青い染みに、一滴何かが落ちた。

塗っても塗っても浮き出てくる青が途端すっと消えていく。



「すまない、あのとき俺は――」

「乾! 霧崎!」


だが消えはじめた青がふと足を止めた。

霧崎君の声を遮って聞こえてきたのは、大庭君の私たちを呼ぶ声。