「……なに……これ」

「ええっ、ちょっと今までなかったよね?」

「ビニール……にしちゃ厚くてもっと柔らかそうに見えんな……てかなんだ?」


薄い、半透明の膜だった。

そしてそれらが私の周りを覆うように展開している。



少しだけ歪んで見える向こう側。

驚いた顔の日下さんと青野君と眉を寄せた大庭君が見える。

ならば霧崎君は、と首を動かせば。



彼もまた私と同じ膜の中にいた。

驚いたような、何か思うところがあるような表情で。


地面こそ教室の床のままだったが、まるで大きな繭に覆われているよう。



「うわっ」

青野君の声に再び3人の方に目をやると、半透明の膜が緩やかな波紋を描いて向こうの世界を歪ませている。

どうやら青野君が指で触ってみたらしく、歪みが落ち着いてゆくにつれ彼の顔と右手が見えた。